2023/06/05

人蝶のゆくさき

 蝶は、成熟すると、自らのサナギの殻を破り、
立派な蝶となって、大空に飛び立ちます。
我々人間にはない、劇的な変化です。

……果たしてそうでしょうか?

今の我々の状態、この肉体こそ実はサナギではないか、と
感じたことはありませんか?

人は、この肉体というサナギの中で成長し、
中身が完全体となった時、肉体というサナギの殻を破り、
本当の意味での「成人」となって、
蝶が初めて目にする大空に飛び立つように、
成人化したヒトは、サナギ(肉体)時代には見えなかった
輝く広々とした空間に、
そう、それこそがサナギ時代に呼んでいた「天国」という
煌めく大空に飛び立っていくのではないか、と
中二の頃の僕は考えるようになりました。
まさしく中二病の思想です。

なるほど、サナギの中にこもっている今の状況では、
サナギの殻の外の世界、「天国」(=死後の世界)は
どうやっても見えません。
しかし、先にサナギ(肉体)の殻を破って“成人”した人たちは
サナギ時代には想像もつかなかった、
心地の良い、輝く大きな広い世界を自由に飛び回っています。
サナギ時代の蝶が成虫し、この大きな空を飛び回っているかのように。

しかし、その素晴らしい天国を飛び回れない人たちがいます。
“成人”するまで成熟していなかったのにもかかわらず、
自分で勝手にサナギの殻を破って出てきてしまった人たちです。
いわゆる“自殺者”です。

考えてもみて下さい、まだ飛ぶことのできない未成熟の蝶が
サナギの殻を破って出てきてしまったとして、
羽もまだ完成していないその蝶は飛ぶことができるでしょうか?
その未成熟な蝶は、真っ逆さまに落ちてゆき、
そして惨めにも地べたに這いつくばって、ただ苦しむしかありません。

人間も同じことです。
まだ立派な羽を身に着けていない、
“成人”になる前の未成熟な人間がサナギから出てきた場合、
輝く大空(天国)を飛び回ることができず、
奈落の底、暗い地べたにべチャッと落ちて、
その世界の底辺で苦しみもがくことになります。

この地べたこそ、今の我々は「地獄」と呼んでいます。
そこは、サナギ時代(現世)の苦しみとは次元の違う苦しみに満ちているのです。

しかし、未成熟のまま、サナギの殻を破って出てきてしまうのは、
自殺に限ったことではありません。
不慮の事故や事件に巻き込まれて、本意ではなく
サナギから出てきてしまう人たちもいます。

しかし、安心して下さい。

天国には、未成熟で出てきてしまった人たちを救助する
「救護班」の人たちがいます。
事故によってサナギが割れてしまい、一時的に底に落ちてしまっても、
救護班がすぐさま駆けつけ、応急処置をし、
天国の「病院」へと運んで、成人化するまで治療してくれるのです。

彼らのことを、今(現世)の我々は、天使、もしくは神とまで呼んでいます。
彼らは、サナギ時代の我々に何かしてくれるわけではないのですが、
羽化後の我々の助けをしてくれるのです。

彼らは、もちろん、自分で殻を破って出てきてしまった「自殺者」についても
分け隔てなく救護はしてくれます。
しかし、そのような自分勝手な“腐った幼虫”は、全て後回しとなります。
何しろ、事故や事件で思いもよらずサナギから飛び出してしまった幼虫が
たくさん沈んでいるのですから。

早くても数十年、長ければ数百年、
ほったらかしにされます。
その間、自殺者はただただ地べたで苦しみ続けます。

現世の苦しみなど可愛いものです。
今の苦しみから逃げようと自殺しても、
それとは比べ物にならない苦しみが、何十年、何百年と
続くのです。

自殺を考えている貴方、その覚悟をもって自殺を実行しますか?

以上をもって忠告させていただきます。
天国で心地よい生活を送りたいなら、自殺はしない方がいい。
何が何でも、とにかく寿命を全うするべきです。


さて、話は脱線してしまいましたが、成人化し天国で暮らしている成人は
そのエネルギーを、天国という空間の中で徐々に使っていくことになります。
(空間に奪われていくと言ってもいいでしょう)
最終的には、そのままエネルギーを使い果たし、消滅してしまいます。

そのように、消滅を望む者もいれば、再びエネルギーを蓄えて
復活しようとする者もいます。
そう、エネルギーの復活には、再び“サナギ”化し、エネルギーを蓄えるのです。

サナギ化とは、もちろん再び肉体を得て肉体の中に籠ることです。
つまり、再びこの現世に生まれてくるということです。
これがいわゆる「輪廻転生」と呼ばれる現象です。

“天国”でさんざんエネルギーを使った者は
羽化まで100年以上など長い年月を使い、
逆にあまりエネルギーを消費しないうちにサナギ化した者は
羽化までにはあまり時間がかかりません。

すなわち、天国にいた時間によって、サナギ化後の羽化までの期間が異なり、
それがこの世で言う「寿命」ということになります。


……なんてことを考えると、死への恐怖は薄らぐと思うけど、
くれぐれも自殺はしない方がいいよね。

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